http://danceofdeath.go-th.net/books/clear_resin_how_to_bookレジン・透明樹脂で作るアクセサリー
本書はそのタイトルどおり、二液混合性のエポキシ樹脂を材料としたアクセサリー作りのHow to本です。エポキシ樹脂のメーカーは明記されていませんが、写真を見れば一目でわかります。これです↓
Amazonより楽天の方が安く買えるので楽天のショップを貼りました。現在定着したUVレジンと比べたらグラムあたりの単価が安いんですが、化学変化によって硬化するので時間がかかるのが難点。でも安いのは魅力的ですよね。
自分の作品をいくらか作った後、敢えてこうして自分の作風とは全くことなる作品の製作How to本を見るようにしています。というのも、自分の作品製作ばかりをしていたら、作風にも製作手法にも幅が出ないからです。「これは自分には絶対に無理逆立ちしても思いつかない!」という作風の作品こそ、意識して鑑賞するようにしないといけないなあ…と特に歳を取るごとに思うようになりました。本書に掲載されている作品もまさにそれ。
このキラキラ感とシャレオツ感、絶対私には無理です。まずこの材料を揃えるところから無理。それをこの組み合わせでセッティングするのはもう技術ではなくセンスの問題です。
ちょっと良いな!と思ったのは…
Instagramの出現以降ポピュラーになった正方形の写真をOHPシートに印刷し、それを封入した作品。これは自分が撮影した写真を使うことができるし、それこそInstagramに投稿した写真を再利用できるので良いアイデアだと思いました。例えば旅先で撮影した写真なんかを使うと思い出を他者と物理的に共有できるようにもなるわけです。
プチペンダントのヘッドにするのも良いですね。
あと斬新だと思ったのは、敢えて封入するパーツの一部をはみ出させるという表現。これは極小のボタンとハサミのパーツを使用した見ての通り裁縫がモチーフの作品なんですが、ボタンに通された赤い糸の先が樹脂から出ているんですよね。
普通、封入パーツははみ出さないように枠に全部収めようとするものですが、それをはみ出させるってなかなか思いつかないですよ。これはキーリングの作品で、おそらく使っているうちに糸も摩耗していくでしょうが、そうした経年劣化も含めた「作品」なのでしょう。
もう一つ良いな!と思ったのはこれ。複雑なロボットのモールドの全体に封入パーツを入れ、樹脂にも敢えてチープな色を付け、グミのようなPOPな仕上げにしている作品です。
複雑なモールドから透けて見えるロボットとは関連性のない封入パーツ。この作品では敢えてロボットとの関連性のないアクセサリーに使用されるビーズを封入していますが、ビスや歯車を封入してスチームパンク的な作品にしても面白いでしょうね。
なお、手軽な手法や身近にある物を上手く作品製作に利用する方法を解説するのがこのテのHow to本の定番ですが、本書もまさにそうでした。樹脂は完全硬化後も過熱で若干柔らかくなる性質があるのですが、それを利用して硬化後にドライヤーを当ててビミョーに手で曲げてカーブを作る方法は、手軽でありながらも樹脂を熟知していなければ思いつかないことです。
あと完全硬化した後の樹脂を鏡面仕上げにするため、研磨剤(コンパウンド)で磨くというのは、車の塗装など工業系の仕事をしているか、シルバーアクセサリーを作ったことのある人でなければ思いつかない方法でしょう。
なお、著者は樹脂の透明感や鏡面仕上げにこだわりのある人らしく、硬化後にピンバイスで明けた穴が曇ることにすら妥協せず、どこをどの角度から見ても曇りがない状態にする方法を惜しげもなく披露していました。
前述のとおり、本書は二液混合性のエポキシ樹脂を扱ったアクセサリーのHow to本なので、UVレジンの扱い方とは異なる点も多く、むしろ普段UVレジンを使用している人にとって新鮮かつ参考になる本ではないかと思います。実は私も特殊造型やフィギュア製作でエポキシ樹脂を使うのですが、繊細で身に着けるものであるアクセサリーで使用する場合はまた勝手が違うので非常に勉強になりました。
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