http://danceofdeath.go-th.net/eventreports/odekakelive_yamagata135_reportシュリンクする東北
山形市の国際展示場「山形ビッグウィング」にて開催された同人誌即売会「おでかけライブin山形135」(以下おでライ)に出展してきました。イベント自体は同人誌即売会ですが、その中に「ハンドメイド作品および服飾雑貨」のジャンル専門の「ハンドメイド・クリエ」というイベントが内包されており、そこに参加したのでした。
おでライに参加するのは1年以上ぶりだったのですが、もうこの景色がたまりません。
ビッグウィングの最寄り駅は山形駅ではなく、そこから2つ先の「羽前千歳」という駅なのですが、これがなんと
無人駅、しかも最寄り駅なのに山形ビッグウィングまで
徒歩20分!これぞ地方の公共施設ですよ。大半の住民が車移動が当たり前なので鉄道を中心に街づくりをせず、国道と高速道路を中心に街づくりした結果、外部の人間に超絶不親切になるという。
ちなみに羽前千歳、無人駅ではありますが仙山線と山形線が乗り入れるハブ駅のため利用者は結構います。山形と仙台を結ぶ大動脈であり、山形市民が秋田県へ行く、または仙台市民が秋田県へ行く乗り換え地点なので、私も実家へ帰る時は必ずここで一回降りるなじみ深い駅です。それなら1人くらい駅員を常駐させてもっと何かすればいいのに…と思うのですが、きっとJRも金と人材が不足しているのでしょう。
こちらが会場のビッグウィング。これが野外ステージ(広場)と本格的日本庭園、広大な駐車場、上階には複数の会議室、1階に2つに仕切ることが可能な展示場を備えたかなり大規模かつ立派な施設なんですが、その周囲がこれ↓
だいたいどこでも国際展示場はちょっと中心から離れた辺鄙な場所にありますが、ビッグウィングの場合、田んぼと畑と民家と山に囲まれているので”異物感”が凄いです。田舎の日常風景の中に突如として現れる場違いさ。その中で開催されるコスプレ可な同人誌即売会。とにかくなにもかもがちぐはぐで最高過ぎます。
なお、1年以上ぶりに来たらFree Wi-Fiが完備されていましたが、これが普通に早くて非常に快適でした。ありがとうNTT。
今回の私のスペースはこんな感じ↓
来年2月に仙台で開催されるドールイベント「Sendai I Doll」に出展できないため、その代わり今回初めて山形にドール用のアイテムを持って行ったのですが普通に売れました。それも仮面が。やっぱりどこにでもドールオーナーさんっていらっしゃるんですね。
あとドールと言えば…
お隣のスペースの方がドール用の帽子を販売していらしたので、なめこに試着させてみたらこれがピッタリ!ということで購入後すぐに着せ、もこもこ帽子とスチームパンク仮面という謎のコーディネートで仮面のモデルをやらせました。
さらにその後、一つ隣の島に出展してらした山形のクリエイターさんのスチームパンクなブローチがなんと300円という激安だったため、これも購入してすぐに着けさせ、無事スチームパンクなコーディネイトになりました。
ということで、稼いだ金を即その場で使用するというご当地経済圏のさらに狭い版をやるような形でイベントをエンジョイしました。スペースにお立ち寄り頂いた皆様、そして作品を購入して下さったドールオーナーの皆様本当にありがとうございました。
で、ここからはおでライ山形…というより東北の経済に対する私の所感です。
まず今回出展して衝撃だったのは、その出展スペース数の少なさです。なんと全ジャンル合わせて24スペース!特定ジャンルではなく全ジャンル合わせてこれです。ちなみに1組で2スペース使うサークル(ブランド)もあるし、当日何らかの理由で来ないサークルもいるので、実際の出展組数はもっと少なくなります。もう私が高校生の頃に秋田県南で開催されていた小規模な同人誌即売会よりももっと少ないという状態。
私がおでライ山形に出展し始めたのは2014年の春でしたが、その当時は100スペース以上あり、販売ペースも売り上げも東京とさほど変わらないくらいの勢いで、一般来場者も多く一時は通路の通行が滞るくらいでした。それからわずか5年で30スペース未満。一体何があったのか?
理由は言わずもがな「少子化」と「貧困化」です。もともとおでライ山形は私が出展し始めた頃から高校生くらいの若いお客さんの来場が多いイベントでした。でも高校生は進路が進学であれ就職であれ卒業後に県外に出てく人の方が多いものです。県内にある大学や専門学校では受け皿になり切れず、就職するにしたって県外の企業の方が明らかに良い待遇なのだから。で、毎年一定人数の高校生が県外に流出するものの、少子化なもんだから新しい世代で減った分を補填できず、年々来場者は確実に減っていくわけです。
あと、5年前は1000円以上のものも普通に売れていて、それどころか数千円の人間用の仮面さえわりとサクっと売れていました。ところが今回、500円のものでさえ購入するかどうか随分悩んでいらっしゃるお客様が多く、しかもそのほとんどが10代~20代と思しき若者。で、結局購入をあきらめるというパターンで、購入して下さった方は50代以上の方ばかりでした。ここら辺、ドール趣味は年齢無制限ということがよく分かる事例ですが、同様に若者の貧困っぷりも如実に現れていると言えます。
なお、おでライ山形の次回の開催スケジュールに関しては「会場と調整中」との理由で未定であることが発表されていますが、おそらく「調整中」ではなく実際には
「中止を検討中」ではないでしょうか。というのも、お隣の「おでかけライブin盛岡」も2020年の開催は2月と9月の
2回のみとなっているのですから。以前はどこの街でも1~2か月おきに開催されていたイベントが数年でこの有様ですよ。
この状態にもはや改善の余地はなく、今後さらにスピードアップし悪化していくでしょう。少子高齢化と若者の貧困化は日本全体の問題であり、子供・若者が減り彼らが貧しくなるほど彼らを対象としたビジネスは成り立たなくなり、結果なくなって年寄りに最適化されたコミュニティが出来上がる。そして前以上に若者は外へ出て行くというサイクルが加速することは目に見えています。だいたい創作活動の発表の場や評価される機会もない場所に若者が留まるわけがありません。
ちなみにおでライ山形はコスプレ参加のみもOKなイベントで、コスプレイヤーさんと彼らを撮影するカメラマンの参加はそこそこ多かったです。とは言え、あくまでもこれは同人誌即売会というイベントで机のスペースを使用するサークルが主役なので、彼らが少なくなればイベント自体はなくなります。もしおでライ山形がなくなってしまったら、彼らは一体どこでコスプレ姿を披露したり撮影すればよいのでしょうか?
今回おでライ山形に参加して痛感したのは
「東北がシュリンクしているからこそ仙台を”おもしろ化”しなければならない」ということです。もともと「仙台は東北のダム」(東北から人口流出するのをなんとか仙台で止めよう!という意味)とは言われていましたが、それを教育やビジネスの分野だけでなくサブカルチャーやエンターテイメントの分野でも推し進めなければならないのではないでしょうか。
というのも、今年3月に開催された東北初のスチームパンクイベント「スチームパンクマーケット」には、仙台市民、宮城県民だけでなく東北6県全てから、さらには北海道からも参加者が集まりましたし、10月に開催された東北初のインディーゲームイベント「インディゲームマーケット」は台風の直後だったにも関わらず、やはり東北6県から参加者が集まりました。つまり、「仙台」ならみんなどうにかこうにか日帰りで遊びに来れるわけです。青森、岩手、福島なら東北新幹線で全部繋がっているし、隣県なら普通列車でも来れます。山形なんて山形駅前からバスで片道950円・1時間程度で仙台に来れるし、秋田県南も距離的に近いからまあ頑張れば普通列車で来れるし、お金をやりくりすれば新幹線「こまち」で日帰りできます。中央と県北は知らんけど。
自己決定権のある大人がクソ田舎で暮らすのはある程度は自己責任でしょうが、子供は生まれてくる場所を選ぶことはできません。年寄りに最適化されたサブカルチャーやエンターテイメントに乏しいクソ田舎で18年暮らさなければならないなんて重大な機会損失です。その状況を僅かながらでも好くするには、とにかく仙台がサブカルチャーとエンターテイメント面でも面白く尖りまくった環境にならなければならないと思いました。
ということでとりあえず私は仙台でホラーでスプラッターでゴスでスチームパンクな作品を作りなめこのぬい撮りをすることにします。
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